大物のスツール
2022/09/12
楠の木のスツール
楠の木のスツール
渡辺木工挽物所では、木工旋盤でテーブルの脚や椅子の脚・貫・背もたれのスピンドル等、支柱などの長物と呼ばれてる物から織物のボビンや家具のツマミや取手などの小物製品や、お椀やボウル、お皿などのカトラリーまで様々な製品を制作してきましたが、もちろんのことながら大物も例外なく渡辺木工挽物所では制作可能です。
木材が直径550mm位なら渡辺木工挽物所にある木工旋盤で材料を回す事が可能なのでその大きさに収まる物なら加工が可能になります。
最近制作した物ですと、木材が楠木と言う独特な香りがする木材で、φ330mmの長さが450mmのスツールを制作しました。
材料で使用する木材は基本的に充分に乾燥されていることが大前提なんですが、今回使用した材料は乾燥が間に合っていない所謂生木と呼ばれる材料も含まれていました。
特徴としては、立っている木を切って間もない材料なので水分を大量に含んでいます。なので、その分材料自体乾燥してある材料よりかなり重いので持ち運びが大変だったりします。
あと水分を含んでいるので、サンドペーパーで仕上げをする時には目詰まりを起こしたり、刃物で削る際には水分も一緒に飛んでくるので上半身がびしょびしょになる位水分が飛んできます。ゴーグル着けないと前が見づらい位にスプラッシュしてきます。
しかも厄介な事に刃物や金属部分に水分が飛ぶので錆びる恐れがあります。
なので、削り終わったら水分をしっかりと拭いてオイルを塗って錆びない様にメンテナンスをしないといけないのでとても大変なのです。
割と生木を削ると言うのはあまりやりたくない材料だったりします。
今回制作するにあたってまずやらなければならないのは、木工旋盤で回せる様にチェンソーで荒く円柱に近い多面体にして少しでも仕上げ削りを削り易い状態にしていきます。
この作業は仕上げするにあたり重要な作業となります。
チェンソーで荒くカットし終えたら、次は木工旋盤にかけて仕上げていきます。
かなり重いので木工旋盤にセッティングするのも一苦労です。
材料の中心にちゃんとセッティングしないと、遠心力が強くなってしまい材料が飛んでくる危険性もあり、尚且つ目標寸法が確保出来ない状態になってしまうので、慎重に材料の中心にセッティングする必要があります。
セッティングしたらいよいよ木材を回転させて削る作業に突入するのですが、回転速度が速いと遠心力が強くなり過ぎて木材が飛んでくる危険性があるので、重くて材料が大きい物は回転速度を落として遅くしてあげる事により、安全に木材を加工する事が出来る様になります。
大きい物を回すのは結構怖かったりします。
まずは歪な形を大きい丸鑿の刃で少しずつ削って円柱に近づけて行きます。
段々と削って円柱に近づいてバランスがとれてきたら、少しずつ回転速度の方も上げていきます。
やはり回転速度が遅いと仕上がり方がどうしても汚くなってしまうので、少しでも綺麗に仕上げたいので木材と相談しながら回転速度ギリギリ速くしながら削っていきます。
それで、指定された形や寸法に水を被りながら段々と仕上げていきます。
後は、天と地を平らに削ってサンディングして仕上げれば完成となります。
こうした大物は、削ったり仕上げたりするのは大変ですが、やり甲斐があり完成した時の達成感を感じます。
あまり大物の仕事は頻繁にある物ではないので、自分自身の技術のスキルが上がる良い機会になり経験も得られます。